本年度は、久米邦武編『米欧回覧実記』(岩波文庫版)を底本として、新たなテキストづくりに重点をおいた。すなわち、光学式読取装置(OCR)およびソフトウェア「読取物語」を用いて、紙面に印刷された文字を電子化し、原本との校合を経て、種々改変を加えたマルチテキストをまず完成させた。つぎに、このテキストの文章や段落ごとに一定のコードを与えて、種々の情報をそれぞれの単位で検索できるようにした2次テキストの作成に移り、こちらの方の作業も本年度末までには終了の見込みである。その時点で必要な語はブラウン管上で検索できることになるが、成果を広く利用できるように、そのCD化を目下テスト中である。 また、それらと平行して進めている作業に、固有名詞・基本用語。難読語などのインデックス作りがある。これはリレーショナル型のデータベースとして作成中であり、今後なお多くの時間を要するであろうが、遅くとも来年度前半までには完成させる予定である。そしてそれらの成果をまって、本研究の目的である当時の地理用語や著者の地理思想の分析に入り、地理古典の読み方について新しい事例を提示したいと考えている。
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