本研究は情報処理技術を用いて、地理古典を読解しようとする試みのひとつであり、その事例として、久米邦武編『米欧回覧実記』をとりあげた。まず、光学式読み取り装置を用いて岩波文庫本から内容を読み取る作業を行った。分量は5編100巻と厖大であり、機器の精度の問題もあって、これに多大の時間を費やした。 つぎに、この電子化された『米欧回覧実記』(実記データベースと仮称)を用いて、各種段文からなるコンコーダンス用テキストと各種インデックス群を作り、それぞれにコードを与えて、相互に引用可能なリレーショナル型データベースを作成した。また、図版は原本からスキャナーを用いてイメージデータとして取り込んだ。これらの編集作業には秀丸エディタやアクセスなど市販のコンピュータ用ソフトウェアを用いた。このようにして作成された機能を使って、目下各種用語の検索を行なっており、新しい知見を得ているところである。成果報告書では、それらの中から地理学に関わりの深い「観光」・「景象」の2語を選んで、その成り立ちと『米欧回覧実記』との関わりについて考察した。 本研究成果の公開については、インターネットの利用を考えており、すでに第2編のみは筆者のホームベ-ジで閲覧できるようにしてあるが、今後はこれを全編に広げ、多くの人々の協力により『実記』の読解を進めてきたいと考えている。
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