研究概要 |
本研究では,わが国三大都市圏のひとつである名古屋大都市圏の中心都市・名古屋市を対象として取り上げ,同市の近代における歴史的発展過程に関する資料の収集とその整理および分析・考察を中心として行った。 名古屋市の市政資料館・名古屋市博物館・名古屋商工会議所など名古屋市内にあって歴史的資料を保存している機関を利用し,明治・大正・昭和前期において,名古屋市がいかなる過程を経て発展してきたかを示す資料の収集と整理・分析を行った。また,名古屋市以外の愛知県公文書館や,東京にある市政調査会図書館,郵政省付属の通信博物館などにも名古屋市の歴史的発展に関する資料が保存されているため,それらの機関でも資料の収集を行った。 資料には一次資料と二次資料があるが,一次資料(公文書・新聞・雑誌・統計書・地図など)については,所在の確認と新資料の発見につとめ,二次資料を含めた資料目録の作成と,これをもとにした研究の基本的枠組みの明確化につとめた。 収集した一次資料を用いながら,名古屋市における交通と通信の発展過程について分析を行い,その成果の一部は都市学会などの機会を利用して報告した。このうち通信に関しては,名古屋市における電話事業の展開過程を都市の空間的発展との関係から考察し,論文としてまとめた。また交通については,近代初期における交通路の変遷や運輸活動の変遷について考察を行い,口頭発表を行うとともに,これについても論文としてまとめた。さらに港湾に関しては,名古屋港の建設と開港に至る過程について資料的な研究を実施した。 こうした研究を通して,近代都市が発展する過程でインフラストラクチャーの整備がきわめて大きな役割を果たしてきたこと,これが今日の大都市としての発展につながったことが明らかになった。
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