ため池の防災上重要なため池の改廃状況を知るために、兵庫県の1966〜68年のため池台帳と1996年のため池データベースを比較分析した。結果、台帳の池総数の8.2%分が廃止されているが、県に廃池届けが提出されたものは総数の4.6%分にしか過ぎない。届けの提出は受益面積の小さな池ほど少ない。ため池の一部を廃止した届出を行ったものは台帳の総数のわずか1.1%分で、実際にはかなり多くの一部廃池が行われたと思われる。廃池は東播磨地域が73.3%ともっとも多く、時期的には1981〜90年に多い。また、改修事業を実施した届けを提出したため池は台帳の総数の6.0%であった。地域としては東播磨が多く、受益面積別では届出の81.4%が5ha以上の比較的大型の池である。時期的には1956〜65年と1946〜55年の台風災害の多かった時期と一致している。 次に、ため池の防災上効果のある行政によるため池整備事業と法的規制について分析した。ため池整備事業のうち、防災上特に重要と思われる防災ダム事業と老朽ため池等整備事業について、前者では全国の都道府県に対して調査を行い事業の実施状況を明らかにした。後者については、全国でも有数のため池をもつ兵庫、香川、岡山、大阪の府県で現在までの実績を調査した。その結果、これら国の補助が50%以上得られる事業は採択条件が厳しく、改修の必要のあるため池の一部にしか適用できないが、工事が実施されれば防災上の効果がひじょうに大きいと言える。ため池の保全に関する条例は兵庫、奈良、香川の3県のみである。これらの条例は県下すべてのため池には適用されないが、ため池の保全上、大きな役割を果たしていると思える。ため池を地域環境資源として整備する施策も今後はより多くなり、重要度を増すと考えられる。
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