本研究の第一の目的は、ボーダーレス時代の国土構造の在り方について論じることにある。 戦後日本の国土構造は、太平洋の対岸に位置するアメリカとの関係によって形成されてきた。しかし、急速な円高、企業の海外進出、アジア地域の成長、アジアとの新しい国際分業体制への移行によって、これまで日本の高度経済成長を支えてきた日本型生産システム、日本型企業システムは見直しを迫られており、アジアとの新しい関係は、日本の国土構造にも大きなインパクトを与えることになろう。 日本経済のアジア化は、明治期以降、特に戦後形成されてきた三大都市圏、特に首都圏への人口、生産、貿易、国際交流機能の集中構造、大都市圏と地方との階層的分業体制を見直し、再編成する契機となっている。 これまで裏日本とされてきた日本海側地域、戦後最大の人口流出地域となってきた九州・沖縄、中国、四国の西南日本の各地域は、三大都市圏よりもアジアに近い。アジアとの固有の歴史的関係を有しているという地理的、歴史的背景を踏まえ、これまでの国土の末端地域としての開発戦略から、アジア時代の地域開発戦略、つまり国土の先端地域への転換を試みようとしている。
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