本研究は、就業者の社会経済的地位からみた都市群システムを、総務庁統計局就業構造基本調査の原調査票全件を、申請者が独自に都市単位に再集計した資料を元にして、明らかにしようとした2年計画の1年目に当たる研究である。本年度の研究によって明らかにされた点は次のとおりである。 1)就業者の種々の属性における、「性別」→「学歴」→「職業」→「年間収入」、「性別」→「従業上の地位」→「年間収入」、「学歴」→「勤務している企業の規模」→「年間収入」、「年齢」→「職業」→「年間収入」という連鎖をもって、個人レベルでの社会経済的格差形成がされていることを明らかにした。 2)3大都市圏・3大都市圏周辺圏・地方圏、都市階層間について、市町村単位に通勤者データを元に、圏域、都市圏単位の都市階層を設定した。設定された圏域、都市階層ごとに、一人当たり年間収入からみた地域格差の実態を、集計用乗率を用いた多重クロス集計結果表によって把握した。その結果、各圏間・各都市階層間で、年間収入のに大きな格差があり、それには地域の産業構成、産業組織網の空間的分業が大きく関係していたことを明らかにした。 3)就業者の社会的属性を同一にした場合、3圏域間、都市階層間の一人当たり年間収入の地域格差を、集計用乗率を用いた多重クロス集計表によって正確に把握した。3)に見られた大きな地域格差の存在によって、2)で明らかにした格差、すなわち個人の属性・地域の産業特性を越えた「中心-周辺」という社会・組織の形成原理が深く格差形成に関わっていることを明らかにした。
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