本研究は、就業者の社会経済的地位からみた地域格差について、総務庁統計局就業構造基本調査の原調査票全件を、申請者が独自に、3圏域単位・都道府県単位・都市階層グループ単位・個別都市単位に再集計した資料を元に、地域システム・都市郡システムの観点から分析を行うもので、本年度は2年計画の最終年度にあたっていた。明らかにした成果は以下のとおりである。 1)就業者の属性グループ(性別、従業上の地位、職業別、学歴別、年齢階級別、企業規模別)ごとに、3圏域間、都市階層における就業者一人当たり年間収入階級結果より、Contigency Coefficient、Cramer'sVという測度を用いて、3圏域間格差・都市階層間格差の大きい社会的属性を把握し、地域格差の実態をさらに詳細に把握した。その結果、わが国の地域格差とは主に男性就業者によって生み出されていることを明らかにした。 2)47都道府県・80主要都市ごとの就業者一人当たり平均収入(全体・男性・女性ごと)を被説明変量、15の地域指標データを説明変量とする重回帰分析を行って、一人当り収入を規定する要因を明らかにした。その結果、都道府県の地域格差にあっては、中心-周辺関係からなる地域システムが基本的に最も重要な要因としてかかわり、さらに全体・男性グループと、女性グループで全く異なる規定要因が働いていることが明らかになった。またわが国の主要都市に限れば、その格差とは、都市の持つ中枢管理機能の集積によって生み出されていることを明らかにした。 3)これらの成果を踏まえて、格差形成メカニズムについて、中心-周辺論・中枢管理機能論をベースとした概念的モデルを提示した。
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