研究概要 |
(1)開発プロセスに関する研究動向の整理,(2)都市計画実施の時空間的分析,(3)事例都市の選定と資料収集の3点を中心に研究を進めた。 第1点では近年欧米の都市政治経済学・地理学において進展している,都市開発・土地開発プロセスのモデル化に関する研究動向を整理した。その結果,開発プロセスモデルは新古典主義経済学やウェーバー社会学,マルクス主義経済学などに基礎を置くものに分類され,その中でアクター・エージェンシーの役割を十分評価できるモデルとしてagency-based modelが,また外部要因まで含めた開発プロセスの全体構造をよりよく説明するモデルとしてレヴィストロースの構造主義の概念を応用した写実的モデルがあることなどが確認できた。 第2点の都市計画実施の時空間的分析では,わが国近現代の都市計画に基づく土地利用規制の展開状況を,時系列的・地域的に分析した。第二次大戦以前の都市計画は,当時の都市システムに対応して,大都市圏中心都市と地方中核都市を中心に展開していったが,国策的要請から地方の軍事都市においても実施された。また,昭和44年の都市計画法改正を契機として,都市圏の郊外拡大にあわせて指定地域が急速に増加し,しかも都市圏外縁部の中小都市において都市化を受け入れることを前提とした地域指定が見られたことなどが確認された。 第3点に関しては,事例都市として旭川市と松山市,別府市を選定し,市役所の担当部署を中心に資料収集を行った。収集した資料は都市計画区域の歴史的・空間的変遷および都市計画思想に関わる文書,地図,統計に加えて,インフラストラクチャー整備については学校,上下水道の整備に関する資料などである。また,地域変容に関わる資料として,対象地域の農業集落カードの分析を行い,当該地域の都市化過程を考察した。
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