研究課題/領域番号 |
08680175
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
堀 信行 東京都立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40087143)
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研究分担者 |
飯島 祥二 岡山商科大学, 商学部, 講師 (80258201)
高岡 貞夫 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (90260786)
岡 秀一 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (50106605)
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キーワード | 色彩景観 / 緑地 / 植生景観 / 街路景観 / 角館 / 萩 |
研究概要 |
今年度は最終年度の2年目にあたるので、研究のまとめを目指して現地調査等を実施した。主な調査地は、昨年に引き続き角館を含み、新たに西日本の萩を中心に色彩景観の研究の発展の可能性を模索した。やはり色彩景観として街路景観やビルの外壁など施設色彩に注目してみたが、顕著な傾向を指摘することが困難であった。当初、本研究の目的は、研究対象地域の植生の色彩がその地域の色彩景観との間に何らかの相互関係が存在するのではないかと考えた。結果的に現在のところ角館と萩の両者を比較しても、この予察的結果を積極的に支持する成果は得られていない。 しかし、とくに角館において毎年9月上旬に行われる祭りに注目したところ、色彩景観として住民が互いに共有する記憶色といえる象徴的な色彩が意識され、それぞれが祭りの山車に表現されていることが分かった。山の象徴である山車は、きわめて濃い濃紺の布で覆われ、それに春の象徴としての桜、秋の象徴としての紅葉したモミジが飾り付けられている。さらに山の象徴に杉の樹も使われ、季節の推移に連動して山と里の間を出入りする神のイメージが植生の色彩を通して表現されている。このほか角館の武家屋敷の特徴でもあるが、京都の地を偲んで移植された枝垂れ桜が、明治以降さらに河岸のソメイヨシノが町のシンボルとなっている。これを受けて、旧制中学の校舎が桜色で塗られたりして、町並みを代表する色彩になっている。 角館に対する萩では、前者のような象徴的な祭りにはまだ遭遇していないが、おなじ武家屋敷でも萩の場合は、柑橘類の夏みかんを植えており、照葉樹と橙色とが象徴的な色彩になっている。 このほか城下町の絵図に使われている色彩にも注目して若干の検討を加えた。この結果とくに萩などでは、城下からの遠近で山の色彩が異なり、遠方ほど紺色に近い色が使用され、きわめて写実的な感覚が作用しているように思われるが、今後の検討部分が多い。
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