スペインにおいては19世紀末にカルターニャ地方を中心に、カトリック教会の指導による貧困救済活動の一環として多様な互助的な協業体が形成され、一部は協同組合として組織化されていた。20世紀に入り、南フランスでは資本・地主階層による融和政策に吸収されたが、カルターニャ地方では第二共和制のなかで協同組合運動が展開していった。しかし、市民戦争後のフランコ体制は、これらを中央政府管轄による産業別シンジケ-トへの再編成を経て、官製の協同組合運動を促進させていった。 1978年憲法は条文に「公権力は・・適切な立法により協同組合を助成する」と明文化し、自主的、民主的運営による経営体としての協同組合の再生の途が図られるようになった。中央政府の立法化に先んじて、自治権を復活させた地方州政府は個別に協同組合・協業経営体を容認していった。1982年に成立した社会労働党政権は新たな協同組合総法を制定し、基準・法規を一元化し、積極的な助成策を講じていった。 とくにスペインのEC加盟が日程にのるにつれ、各種商品のEC基準への準拠や国際競争への対応として中小零細経営体の集団化が政策課題となり、中央政府は組織強化と協同組合の育成に巨額な予算を計上していった。 1986年にECに加盟することになり、EC自体も「社会的貢献に寄与する協同組合」と位置付け、各国の協同組合を中心とする社会的経済への助成措置を図ることになった。このようなECの政策を背景としながら、1991年にスペイン政府は世界で最初の社会的経済助成局を設置した。また、協同組合自身も政府の支援を受けつつ、1993年に横断的な全国組織を設立している。
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