スペインにおける協同組合事業は多様に及んでいるが、事業の空間的な拡がりからすると、地域社会に密着した狭域的事業と全国的に事業を展開する広域的な事業に大別される。前者の典型例が電化協同組合である。1920年代に零細山間集落の電化を目的に設立された組合は、独占的電力企業に吸収されながら淘汰されていったが、今日にいたるまで事業を継承している組合が存在する。 住民の大半を組合員としているヴォレンシア県クレビジェンテ組合は、自営発電所の建設し余剰電力は電力企業に販売している。組合事業収益を集会所や遺体安置所建設など地域社会のニーズに対応した還元を行うことによって存続の基盤を強化している。また、他の組合の多くは電力企業からの高圧電力を購入し、集落内に変電所を設置して組合員世帯に配電している。これは電力企業の電圧別価格差を利用したものである。 広域的事業は幾つかの組合を傘下にした連合会で展開され、ヴァレンシア県のアネコ-ブや北部オレンセ県のコレンを典型例としている。アネコープは柑橘輸出協同組合を母体としており、国内中央部から北部へと傘下組合を拡大しつつ、取扱果実を多角化することによってスペイン有数の輸出業者に成長している。コレンは県内の中小組合を統合しつつ、家禽・酪農品に加えて地域特産の栗加工品生産に特化している。これらの組合はスペインのEC加盟に伴う市場の拡大に対応した協同組合事業の再編成の事例としても位置付けられる。
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