最近のスペイン経済の特色のひとつとして、1980年代後半の協同組合の活性化が指摘される。本報告はこれまでの現地調査を踏まえた分献・統計調査を協同組合の展開に収斂させ、協同組合事業の展開・実態と地域的偏在を明らかすることを目的にしている。その結果、次のことが明らかにされた。 (1)協同組合活性化はスペイン社会の独裁制から民主化への移行と並行し、新憲法発布と社会労働党政権の成立が大きく寄与していた。 (2)スペインのEC加盟はフランス、オランダにおいて展開されていた先進的な協同組合運動との連携を促し、ECの社会的経済の推進制策に適応させることになった。 (3)中央政府は協同組合を労働・雇用政策の一環に位置付け、ヨーロッパで最初の助成局を設置し、協同組合は全国的横断組織を結成し、スペイン協同組合の双璧が形成された。 (4)市場の拡大、ヨーロッパ規格への適応、国際競争力強化、長期化した経済不況への対応として、零細事業体の協業化や零細協同組合の合併が進行した。 (5)零細経営の在続、地域農産物の加工のような伝統的な防衛型組合が少なくないが、ヨーロッパのみならず国際市場へ進出する積極的な組合事業へ転じる組合が増加している。 (6)協同組合には減税措置が講じられ、事業収益は社会的還元の源泉となっている。地域社会のニーズに応じた還元を行っており、組合の存続基盤の拡充に寄与している。 (7)協同組合の分布は第2共和制期に協同組合運動が興隆したバスク、カタル-ニャ地方に集中しているが、資源環境の多様性、地域経済の不均衡は地域的にさまざまな協同組合事業を形成させた。
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