本研究は、日本の景観の特徴が多様な植生によってもたらされているという明治時代の外国人の指摘に従い、日本人にとって好ましいと思われる植生景観の存在を確認し、それをもたらしている植物群落景観の構成条件を検討するものである。本年度は初年度であるので、日本で最も多様な植生景観が見られると言われている南アルプス及びその周辺域において、多様な植生を撮影した写真を、長野県、山梨県、静岡県の学識経験者、国立公園管理者、市町村、一般住民に協力を求め収集した。このとき植生分布を定める条件である高度差や地形、気象条件、人為の干渉強度などを考慮し、また季節による景観変化も考え、さらに遠景、近景など多様な景観タイプの植生写真を収集した。山梨県側からは山岳を中心とした植生景観写真、静岡県側からは植生調査が実施された場所の植生写真、長野県側からは一般住民の郷土景観として見られた植生写真が得られた。また研究者も実際に現地を訪ね、植生の現状と写真が撮影された現地の状態を確認した。 これらの写真データを整理し、撮影された季節、場所、景観タイプ、植生の特徴を判別した。そして、研究分担者及び、調査協力者が一同に集まり、写真を選定する基準を協議しながら、写真を用いたKJ法を実施し、典型となる植生景観タイプを見いだす作業を行なった。これらの中から典型となる写真を選定し、次年度のアンケート調査に用いる写真の原板を用意した。またKJ法の実施で得られた評価の基準軸について既存の知見を集め、これまでに報告されている景観評価に関する知見とも比較検討し、次年度に調査する調査項目とカテゴリーを検討した。
|