研究概要 |
最終氷期における日高山脈の氷河作用,とくに最拡大期に関わる研究を野外現地調査を中心にトッタベツ川流域において実施し,以下の結果を得た. 1,最大拡大期の氷河地形は氷河末端近くでは不明瞭なトラフ地形しか残っていない. 2,しかし,顕著なロッジメントテイルをトラフ底付近で発見した. 3,このテイルはToyaテフラ,Aso-4テフラを挟む支流性の厚い堆積物を覆っていることから,約8万年前には氷河は最拡大位置よりやや上流の位置まで前進していた。なお,これら二層のテフラは日高山脈における最初の発見である. 4,トラフ(U字谷)の地形は,最終氷期開始期の堆積物に埋積されていることから,前の氷期に起源がある.このような,最終氷期以前の氷河作用の地形的証拠は,日高山脈の氷河作用研究において初めて明らかになった. 5,氷河表面は,現在の本流谷底からの比高約90mの位置に復元できる. 6,サイドモレーンと解釈できる地形的位置において,En-aテフラを発見した. 7,解析図化機によって作成した地形図上に,空中写真判読に基づく氷河地形分布を記載した. 8,現地調査によって得られた上記の現地観察結果を図とし,氷河地形,堆積物インベントリ-としてまとめる作業を開始した.
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