1.中国タクラマカン砂漠-黄土高原-韓国-日本列島全域で採取したMIS 2のレス、古土壌中に含まれる微細石英(<20μm)についてESR分析による酸素空格子信号強度を測定した。この結果、東アジアでは(1)シベリア、モンゴルといった先カンブリア紀岩石地域から北西季節風によって高緯度コースを運ばれる風成塵、(2)夏季の偏西風ジェット気流によって中緯度コースを運ばれる風成塵、(3)冬季の偏西風ジェット気流によってインド、中国南部の先カンブリア地域から低緯度コースを運ばれる風成塵が存在したことが明らかになった。 2.この結果から最終氷期最盛期のMIS 2における東アジアの古環境復元、とくにヒマラヤ・チベット高原を中心とするモンスーン変動、偏西風ジェット気流、シベリア高気圧の消長を明らかにできた。 3.福井県黒田・中池見両湿原に堆積する最終氷期泥炭層に含まれる微細石英の堆積量、粒度分析、ESR分析を行った。この結果、(1)MIS 2と4に風成塵の堆積量が増加したこと、(2)風成塵は新ドリアス期、Heinrich events 1〜5、LGMにそれぞれ短期間に堆積したこと、(3)新ドリアス期や4.2万年前には石英を主体とする細粒で量的に多い風成塵が中緯度コースを運ばれ、LGMやHeinrich event各時期にはイライトを多く含む粗粒で量的に少ない風成塵が高緯度コースを運ばれ堆積した。(4)こられの時期に堆積した風成塵がヒマラヤ、チベット高原上の雪原に堆積してアルベドを低下させ、アジアモンスーン地域において、その後の急激な気温上昇をもたらしたとするOverpeck et al.(1996)の仮説を支持する結果を得た。
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