1)東アジアのシベリア、韓国、中国、日本、台湾、ニュージーランド、トルコ、オーストリアに堆積するレス・風成塵に含まれる石英についてESR分析による石英の酸素空格子信号強度を測定した。その結果、第四系:<0.7、第三系:2.0〜2.8、中・古生界:3.3〜4.7、先カンブリア岩:11.0〜17.1の測定値(2.51E+13vacancies/g)を得た。 2)日本列島の福井県以北はシベリア、モンゴルなどの先カンブリア岩分布地域から冬季北西季節風によって高緯度コースを、福井県〜沖縄島までは中国内陸部の乾燥地域から夏季亜熱帯偏西風ジェット気流によって中緯度コースを、宮古島〜与那国島まではインド、中国南部の先カンブリア岩地域から冬季亜熱帯偏西風ジェット気流によって、それぞれ運ばれ堆積したものであり、ESR分析による風成塵石英の産地同定によって過去の卓越風の復元が可能になった。 3)台湾のレスは現地性風成物質の混入が多く、ニュージーランド北島の土壌には火山灰の混入が多く、ともに酸素空格子信号強度が低い。ニュージーランド南島のレスのうち細粒(30μm以下)物質は、先カンブリア岩が広く分布するオーストラリア大陸から偏西風によって運ばれた可能性が高い。 4)東アジアの風成塵は、最終氷期中の寒冷な時期、例えばDansgaad-Oeschger cold eventやHeinrich eventに短期間に集中的に堆積した。風成塵の堆積がチベット高原のアルベドに変化をもたらした結果とみられる。
|