研究概要 |
1 理論的な各種文献を分析した結果、高度科学技術社会においては解決済みで唯一正答を追及する純粋科学指向の従来の理科教育から転換した、新しいイシューズ指向の科学教育が必要なことを明にした。さらにこの新しいイシューズ指向の科学教育としてのSTSの基本理念は、科学・技術に関連した社会的(STS)問題の解決とそれらSTSイシューズに対する意思決定とそれに基づく市民としての行動化にあり、これら意思決定と行動化を図る際の人間の高次思考スキルが総合的判断的思考であることを解明し、これらの関連の構造化を明らかにした。英語圏の科学教育界を調査した結果、米国のBSCSの開発したヒトゲノム計画に関する3種類のモジュール教材(1991,1996,1997)、さらにカナダの"Logical Reasoning in Science & Technology"(1991)等は、まさに高度科学技術社会におけるイシューズ指向の科学教育のカリキュラムの好例としての教材であるこが明らかになった。 2 理科教師の現職教育の観点から、実際の理科授業における意思決定指導の支援のための意思決定過程と総合的判断的思考との関連を解明し、これら両者を重視した意思決定指導プログラムの具体策を中学校理科を事例に明らかにした。 3 以上の理論的背景と綿密なる関連をもたした高校生物教育における、「遺伝子治療」と「臓器移植」を題材にした具体的なモジュールを、実際の高校生を対象に開発、試行した結果、高校生物教育において有効なる評価を得た。 4 従って、高度科学技術社会においてはイシューズ指向の新しい科学教育が必須であり、それには新しい基本理念とそれを具体化する新しい教育内容と指導方法の開発が必須であり、今後さらに理念の精緻化と幾つかの具体的事例の開発が課題であることも提言した。
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