今年度は、環境保全地域づくりに関連する資料の収集を行うなど、前年度の研究を継続すると同時に、全国各地で進められている個々の環境保全型地域づくりの環境教育的評価を行った。特に、環境保全地域づくりの事例(エコミュージアム、グラウンドワークなど)を訪問調査し、その取り組みの現状と問題点などを環境教育的視点から検討・分析を加えた。具体的には岩手県東和町(エコミュージアム)と静岡県三島市(グラウンドワーク)、岐阜県郡上八幡を訪問調査した。 東和町では現在、地域の自然資源と文化資源をそのまま「学校」、「研究所」、「実践空間」と位置づけ、地域住民と来訪者が共に「学び」、「考え」、「研究し」、「実践する」創造の広場とする運動が生涯学習として住民参加のもとに展開されている。イ-ハト-ブエコミュージアム構想とよばれるこの活動はエコミュージアムとグリーンツーリズムを合成した活動であり、地域の内発的発展をめざした環境保全型地域づくりとして高く評価できる。生涯学習の視点から子どもエコクラブや地域老人会など、広範な世代を巻き込み展開されている活動はまさしく生涯学習としての環境教育といえる。しかし、地域の多様な自然環境・文化資源への地域住民の情報のシェアやアクセスが十分とはいえず、広い意味でのネットワークの構築が今後の課題である。一方、他地域とのネットワークの形成については努力が払われている。 三島市は1970年代の三島・沼津コンビナ-ト建設反対運動をとおした有名な公害教育が展開された場所である。また湧水地としても知られており、グラウンドワーク活動も湧水の保全運動をきっかけに始められたものである。三島のグラウンドワークも環境教育的には高く評価できる活動である。郡上八幡においては清流カレッジに代表される水を生かしたまちづくりが行われている。この郡上八幡の活動を一種のエコミュージアムとして位置づけ環境教育の視点から評価を加えた。
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