研究概要 |
今年度は,両眼視差立体視切離に関する技術の完成度を高めるとともに,切離デバイスとしてナイフ型,鋏型,鋸型のデバイスを開発しその操作性を改善した。同時に,微妙な抗力実現のために生体構成物質の物性に関する基礎的な研究を行なった。これらの実験結果をもとに立体視切離感覚実現のためのフォースディスプレイシステムとそれを利用した手術解剖シミュレータの製作を行った。 まず,両眼視差を利用した立体視切離について,切離デバイスの使用時の画像の歪など実際の形状との差を極力締めるような研究を行った。そのために眼球運動による視線調節機能についての研究を行い,視標の運動に依存した眼球の統合運動を実現した。さらに手術および解剖時に切断面を明示するようなインディケータを開発し,これを用いて目的にあった円滑な切離が行えるようにした。なお,一様な物性もつ弾性体を実際に切離デバイスにより種々の速度で切断するときの抗力の発生機序について理論的な解明を試みた。さらに生体臓器を構成する組織を切離デバイスで切断するときに発生する抗力の測定装置を開発し,これを用いて切断時の切離デバイスに加わる抗力を実測した。つぎに,ホログラフィを利用した臓器画像の立体表示の基礎研究を行った。具体的にはレーザ発生装置を用いて干渉縞を作り,これを移動して一定空間内に立体画像を再現した。立体画像との位置関係から画像切離時に切離デバイスに抗力を与えながら,切離された臓器のホログラムを高速合成し,その映写を一部試みた。 今後は3次元臓器画像の立体視切離を含む種々の操作に,インディケータを含めて抗力および接触時の円滑な感覚実現のためのハードウェアの改良とソフトウェアの開発を行い,人間の脳解剖および手術に関する教育支援システムの実用化を目指した研究を行う。具体的にはコンピュータからの指令で空間の任意の方向に抗力を発生し,これを切離デバイスに伝える小型の電子機器装置を開発する。また画像として構成した仮想物体を立体視しながら,上記のデバイスと電子機器装置からなるフォースディスプレイシステムを用いてこれを切断し,その結を果瞬時に画像合成するための処理システムを開発する。なお,解剖教育のために,両眼視差で立体視した臓器画像を現実感をもって切離できる大型ディスプレイ装置を用いたシステムの開発を試みる。
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