平成9年度の最も大きな成果は、「思考活動の表現フレーム」を使った算数の授業の構造が教育方法学において求められている授業と全く同じ構造をしていることを明らかにして次ぎの[1][2]を得ることが出来たことである。 [1]佐藤学氏(東大教育学部)は対話的学びの三位一体論を提唱し、その中で、授業というものは、本来、[(1)対象との対話 (2)自己との対話 (3)他者とのコミュニケーションと呼ばれる対話]に3つの対話が相互に媒介し合って三位一体となって展開するような授業(学び)でなければならないことを強調している。そして、(1)活動的実践(2)対話的実践(3)共同的実践の3つの実践が互いに他を促進するような形で展開していくような授業を求めている。しかし、それは、あくまでも、理想の授業を示しただけであって、その"授業づくり"の具体的な手立て、方法は何も示されてこなかった。 ところが、本研究の中で開発されてきた、「思考活動の表現フレーム」が、前記の(1)〜(3)の3つの実践を互いに他を促進するような形で展開させていく道具の役割を演ずることが明かなったにである。しかも、そうした授業は、算数・数学が嫌いな大勢の子供たちを、算数・数学の好きな子にしていくことがわかってきた。 [2]「思考活動の表現フレーム」を使った算数の授業は、子供たち主体の授業展開となるために、従来の教師主導型の授業より若干、進度が遅れ、市販のテストに向けての特別な指導も全く行われないために、期末のテストの成績は例年より平均点が少し低くなる傾向がある。しかし、『1年後に、全く抜き打ち的に行われる実力テストでは、「思考活動の表現フレーム」を使って学んだ事柄に関する成績が際立ってよい結果が出る。』という極めて注目すべきことが明らかになってきた。
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