20歳前後の女子学生約200名を対象に、3ヵ月間基礎体温表の記録を行わせ、あわせて痛みや精神的愁訴などの身体不調に関する自記式の調査票を毎日記入させた。月経時には下腹部痛や腰痛などの「痛みの愁訴」が多く、月経2日目には約30%の者につらい痛みの症状が見られた。「精神的愁訴」は月経中が約15%、月経前には約10%にみられた。重回帰分析で、月経中の痛みと最も関連のある変数は、肥満度(やせているほど痛みが大きい)であり、ついで基礎体温で2相性が見られる群に痛みが強かった。さらに、月経中の「痛みの愁訴」が強いものほど抑うつや不安が強かった。集団全体としては、月経周期に伴って抑うつや不安の大きさに変化が見られなかったが、ふだんはそれほど抑うつ度が高くない「積極的性格」の群で、月経中に抑うつ度や不安が強くなることが明らかとなった。 一方、全国9ヵ所の15歳から19歳の思春期女子約300名と30代の女性約900名を対象として、自律神経系の症状を中心とした不安愁訴(43項目)の有無や、月経前あるいは月経中に決まって起こる症状(各19項目)の有無に関する調査を行った。その結果、自律神経系不安愁訴の訴え数では、10代と30代で大きな差は見られなかったが、具体的な項目では、「肩や首すじがこる」は30代の方が多く、「疲れてぐったりする」「心臓がしめつけられる」「人より息切れがしやすい」「たびたびめいまいがする」などの項目で、10代は30代より有意に訴え率が高かった。月経前の愁訴は、ほとんどの項目で10代が30代より訴え率が低く、強い症状がある人の割合も低かった。しかし、月経中の症状では、「胃痛」「下腹部痛」や「便秘」が10代に多かった。また、寝込んだり薬を使用するような強い症状は、10代の26.5%に見られ、30代の20.9%よりやや多かった。
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