日本の博物館では、自然史に関して極めて多種多様な展示を行っている。しかし、その詳しい内容については、まだ公表されている報告は少ない。1996年4月から1999年3月までの3ヶ年にわたって、主に次の3つのことを目的として日本の一部の博物館の自然史(動植物)展示の実態調査を行った。 (1) 展示の主題、項目、展示資料、解説内容等を詳細に調べて、展示構成の基礎的資料を得ること。 (2) 展示の項目ごとに内容を科学教育等の視点から解析し、その教育内容と特性を明らかにすること。 (3) 研究の成果を、今後の自然史の展示や教育的利用に役立てるためにデータベース化を図ること。 3年間に、関東・信越地区で栃木県立博物館等11館、北海道・東北地区で青森県立郷土館等10館、近畿・中国・九州地区で大阪市立自然史博物館等9館、合計30館の自然史(動植物)に関する展示の実態調査を実施することが出来た。調査内容は、上記の目的にそって、それぞれの博物館で展示の主題、項目、展示資料等を記録するとともに写真撮影を行うことに重点をおいた。これらの結果、4.000枚以上に及ぶ写真資料等極めて多数の調査資料を得ることが出来た。これらの資料を各博物館ごとに整理して、まず、「自然史展示基礎資料」を作成し、これに基づいてさらに「自然史(動植物)展示の構成」を表形式にまとめた。この過程で展示内容の検討等も行った。しかしこれらの研究的作業は専門的判断や写真の読み取り等で長時間を必要とし、整理が終わっていない博物館もある。また、このたびの実地調査や資料整理作業を通じて、日本の博物館における自然史(動植物)展示は、生物相、分類、地理的分布、生態分布、群集生態、人間生活との関係等、極めて多分野にわたる事柄をテーマとし、かつ多数の資料を用いて構成しており、科学教育等の充実に寄与するものであることにいっそう自信を強めることも出来た。科学教育等の見地から展示内容を検討した成果については今後知見をまとめたものから発表することとし、今回はこれまでに作成した「自然史(動植物)展示の構成」、データベース化に関する資料、ならびに実地調査をした博物館と展示室の状況を概念的に示す写真の一部を報告書としてまとめて提出した。
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