環境教育を保育に導入する際には、保育者の環境教育に対する意識が高まっていることが必要である。そのためには、保育者志望者を養成する場と、現場保育者を対象とした研修の場に啓蒙が重要である。そこで、まず、保育者養成の8割を担っている短大生の環境教育経験と環境観の実態調査をもとに環境教育を実践できる保育者養成のあり方を検討した。調査の結果から、子どもの頃の自然体験は比較的多いが、環境教育を十分受けたとはいいがたく、現状では自然や環境問題への関心は高いが、行動には結びついていないことがわかった。その実態をふまえて、養成校では〈1〉環境問題や幼児期からの環境教育の必要性について正しく理解する、〈2〉身近な生活のなかで環境保全や自然に積極的に関わる行動力を持つ、〈3〉自然と触れ合う遊びを中心とした保育における環境教育の指導力を持つの3点を養成することを目標に教育課程の編成が望まれる。具体的には、まず、3目標に対応した科目を養成期間内に段階的に開講することが必要である。教育内容は、身近でリアルタイムの話題提供や生活に密着した調査、学生自身の自然体験などが重要で、教育方法としては双方向の参加型学習や体験学習、学外講師起用などの方法の採用が求められる。次に、兵庫県内の保育者を対象に環境教育に対する意識と実践の実態調査をおこなった。結果から、保育者自身の生活者としての実態は理屈や観念上ではかなり意識や理解がある反面、現実に身近な環境に配慮したり親しむ行動をとることにはやや積極性に欠ける、あるいは実現することには困難があるという現実だといえる。環境教育については本来の意味でとらえているのは半数であった。また、保育実践においても、保育が従来から重視してきた子どもと自然とのかかわりについて、ほとんどの保育者はその意義も認めており、それを実際に実践に移していく価値や、保育者の実践力を高めることについて、認めているといえる。しかし、環境教育を意識した新たな自然とのかかわりのあり方を追求する必要性や、環境に配慮した生活のあり方を子どもに伝えていくことについては共通認識としてとらえられていない。子どもたちが経験している内容も保育環境の構成のあり方や援助の仕方についても、従来からの保育の基本的な考え方にそったものは、かなり取り入れられているといえよう。しかし、環境教育的視点から見て望ましい自然とのかかわり方、環境に配慮した生活行動を身につけてもらうための援助のあり方をすることや幼児のかかわる物的環境要素として環境に配慮した物を選ぶことなどについては、その必要性が高くは認められていない。そうした保育者を対象として研修を行う場合、(1)環境教育とは何かについての基本的な理解、(2)環境に配慮したライフスタイルを保育者自身がもつ重要性の理解、(3)環境教育の視点から見た自然遊びの指導力を高める、(4)保育者の職業倫理として環境倫理を意識することが求められる。保育者自身には、研修への意欲はあるので、それを無駄にせず、自然と触れ合う遊びの指導法を豊かにし、保育における環境教育のあり方について理解を深める内容を、実際に体験できるようなワークショップや実物を前に知識を深められるような専門家による観察会というような手法を通して研修することが必要である。
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