本研究は、画像資料を媒介させて一般人と研究者間に情報ネットワークを形成させ、その成果を自然系博物館における研究活動に応用することを目的として実施された。ここでいう画像資料の大部分は、一般ダイバーが趣味として撮影している魚類の水中写真のことであり、ネットワーク形成による主たる成果とは、神奈川県立生命の星・地球博物館で稼働させている画像データベース、「魚類写真資料データベース」の構築である。構築された画像データベースは、実際に魚類の分類学的研究、生物地理学的研究、生態学的研究への応用が試みられた。 一般ダイバーから魚類の水中写真を収集するため、1)ダイバーを対象とした普及講演、2)ダイビングショップやイベント会場でのリーフレットやちらしの配布、3)ダイビング関係の雑誌上での広報を行った。また、魚類の水中写真が自然系博物館における資料収集の対象として価値を持つことを魚類研究者に認知させるため、日本魚類学会での展示発表と同学会のシンポジウムでの講演を行った。 実際にデータベース化された魚類の写真は、1995〜1996年度が11085件、1997年度が5364件、1998年度が6005件で、合計22454件である。これらの写真に基づき、分類学の分野では、1)未記載種の発見、2)色彩変異の解明、3)成長過程に伴う色彩変化の解明、4)雌雄差の解明、生物地理学の分野では、1)地域別魚類目録の作成、2)日本初記録種の発見、3)熱帯・亜熱帯性魚類の北限記録の更新、生態学の分野では、1)出現時期の解明、2)生息場所の解明、3)遊泳姿勢や定位姿勢など、生息状況の解明などが行われた。
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