研究概要 |
知的障害者の能動性や学習意欲を高めることを目的としたマルチメディアCAIソフトウェアの作成を行った.知的障害者の学習用ソフトウェアで最も考慮しなければならないことは,(1)学習者がソフトウェアの操作で困惑が生じないようにすること,(2)ソフトウェア自体の動作を明確にすること,(3)画面の動きと入力との関係を明確にすることが上げられる.本ソフトウェアでは,入力方法として操作の分かり易いタッチスクリーンを用い,能動性を高めるためドラック式の入力(画面を触りながら動かす)を採用している.また,アニメーションによって自分の行動(入力)と画面上の動画との対応が学習者に容易にわかるようにした. 以上のCAIソフトウェアを長野養護学校へ持ち込み,知的障害児十数人に使っていただきその評価を行った.これまでの学習ソフトでは,一度のタッチで正解・不正解がすぐに分かってしまい,答えのパターンを覚えてしまったり,何も分からずにただタッチスクリーンに触るという行動をとっていた児童も,ドラッグ式の操作によりある程度の時間集中して操作をしなければ,解答に到達することが出来ず,能動性,集中力を要請することが可能となった.また,アニメーション動画を導入したことによりソフトウェアの動作がより明確になったこと及び自分の動作により絵が動くことによって集中力が飛躍的に向上した.先生が一対一で教えている時には,机にじっと座っていることさえ出来ない児童が,30分程度一生懸命このソフトを操作して学習していたという事例も見られ,本ソフトの利用によって当初の目的(能動性,集中力,学習意欲の向上)は達成出来たと考えている. 次年度は,このソフトウェアを容易に作成するためのオーサリングシステムを作成すること及び今年度の実験で得られた問題点の検討を行っていく予定である.
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