1. コミュニケーションメディアとしての電子メールの特性に関して 電子メールによるコミュニケーションの内容や表現が、乱暴であったり感情的すぎたりすることが問題になっており、教育におけるインターネット利用の普及にあたって早期に取り上げるべき問題であると考えられる.代表者は、このことの背景を、コミュニケーションメディアの特性の比較や、言語行動と関連させた考察によって明らかにすることを試みた. 2. 従来の学校文化・学習文化とインターネット利用授業との文化的コンフリクトについて通常の学校とは異なる学習文化を有すると考えられるフリースクールにおけるインターネットの利用の継続的な観察と、以前から総合的な学習に取り組んでいるある学校でのインターネットを用いた総合的な学習における問題の検討から、それらの問題のいくつかは、従来の、教科書を中心とする教科の学習における学習文化との間の文化的コンフリクトによって生じることを見出し、検討した. 3. インターネットの利用における予期しなかった結果に関する検討 インターネットの世界においては、意味と意味とが予期しない形で関連づけられることによって、新たな意味が紡ぎ出されることがあり、これが教育実践における問題の原因となるだけでなく、児童・生徒に危険を与える可能性があることを、実際の事象の観察・分析とインターネット上での追調査によって明らかにした. 4. 教育実践研究(授業研究、教師研究)と質的研究についての検討 教師の行う教育実践における諸要因を、意図的なものと無意図的なもの(社会・文化的な要因)とに分け、従来の実証的な研究手法がおもに前者の意図的な要因を分析対象としていたのに対し、教師研究における質的研究の意義は、後者の無意図的な要因を分析対象とし得ることであると位置づけた.また、日本の伝統的な教育学的・教育方法学的な授業研究と、本研究のような質的研究手法との関連について研究した.
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