本研究では遠隔地間の同時双方向授業を実現できるメディアとしてテレビ会議システムの実用性を検証するとともに、既存の遠隔教育システムで効果的に授業を行う方法を吟味した。心理学的手法を用いた研究により次の点を明らかにした。 1.遠隔講義を受講した学生の印象評価を分析した。因子分析の結果、「授業の総合評価」、「モニタ画面」、「音声」、「スクリーン映像」、「受講による疲労感」、「質問」、「遠隔教育への期待」という7つの因子を抽出することができ、印象形成に関わる要因が明らかになった。 2.遠隔教育システムを利用した教員に印象調査を実施した。分析の結果、遠隔講義に対して全般に肯定的評価がなされたが、コミュニケーションの双方向性の点では課題があったことが示された。学生の評価と比較することで、2つの調査間で印象に大きな違いがなく、遠隔多人数授業を行うために本システムが実用に耐えうることを確認した。 3.注意の資源理論に基づいて、受講者の心理的負担を検討した。処理内容に共通点が多いことからテレビ視聴に関する先行研究の知見を参照して分析をすすめ、受講者の効率的な資源配分が授業理解を高めていることを示唆した。 4.遠隔教育システムを効果的に運用する方法を検討した。上記の分析に基づいて、「画面の見やすさ」、「受講者の興味持続」、「双方向性の積極的利用」という3点が授業方法をさらに向上するために重要であることを明らかにした、各点について具体的な改善方法を提示した。
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