研究概要 |
大学入試など,障害を有する受験生に対する公正な試験時間の延長量を定量的に推定するために開発した、時間-応答率曲線による推定法をさらに吟味した。試験時間を制限しない作業制限法の実験データから、試験時間を制限する通常の試験の試験時間延長量を推定するため、健常受験生と視覚障害受験生の時間-得点率曲線を得点率で比較する推定法を新たに開発した。時間-得点率曲線は横軸に解答所要時間をとり、縦軸に相対累積得点をとってプロットしたものである。時間-得点率曲線による推定法と、時間-応答率曲線による推定法の推定値は、国語・数学・英語の3教科ともほとんど一致していた。両受験生群の得点分布が相違する場合は時間-得点率曲線による推定法が適切である。さほど相違していない場合は時間-応答率曲線による推定法も有効であることが見出された。 研究を可能にするため開発したコンピュータライズド・テスト・システムの性能をさらに吟味した。コンピュータライズド・テストと通常の紙と鉛筆のテストとを同一の被験者群にラテン方格法の実験計画で実施した結果、両テスト方式の違いは、回答所要時間や得点等、試験結果に影響しないことが見出された。このため、本システムで紙と鉛筆の試験の回答過程の研究が可能であることが実証された。 なお現在、試験時間の制限が解答過程に及ぼす影響、弱視受験生に対する試験時間延長量の推定及び点字問題と音声問題の解答過程の比較に関する実験データの解析を終了し、論文を執筆中である。
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