今年度におこなった研究の成果を整理すると次のようになる。 1つには、国民学校期の「総合学習」の原理論にもとづく教材論的研究である。 「生活」に視点をおいた教材は、学生発布以降、大きくは3期にわかれる。それは「近代科学概念」提示型から「身近な教材」提示型へそして「生活単元」学習型へと移行していることを、「物質の三態」教材をもとに明らかにした。 2つには、諸地域の小学校で戦前からの「総合学習」理論を引き継いでいる事例をとりあげ、そのカリキュラム上の特徴を明らかにした。それは、1931年に設置された根津化学研究所(現武蔵大学内施設)の玉虫文一文庫にその一例をみることができる。そこでは当時の現代的な科学・技術と生活・産業との関係や、エピソードないしはピック的教材を積極的に理科教育として位置づけたものであった。 3つには、今日提言されている「総合的な学習の時間」設置の試みが実施されつつあるが、それらは、教科・領域の枠を越えた、戦前の「総合学習」論とは異なった、大規模なカリキュラム再編成によるものであることが明かとなった。
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