今年度の研究で明らかになったことをまとめると、次のようになる。 1 国民学校理数科理科は、1930年代〜1940年代にみられる総合学習の一つの具体化であり、その具体化が初等教育低学年期の理科新設、4学年以降の理数科(教科)の中での理科と算数(科目)の統合となっていたこと。 2 国民学校理数科低学年における統合は、教師用書『自然の観察』に具体化されたが、国民学校発足前に、東京高等師範学校や東京女子高等師範学校、奈良女子高等師範学校、広島高等師範学校の各附属小学校で、先駆的実践とその理論化の試みがなさていたこと。 3 国民学校初等科高学年においては、(1)『初等科理科』『初等科算数』で、同一現象・事象の量と質の両側面から、学習内容の分担がされていたこと、(2)その分担は、物理量である温度と熱量、てこ・輪軸・滑車や合力・分力、仕事等に限定的におこなわれていたこと。 4 このような理数科における総合的な学習の試みは、すでに日本の「占領」時の朝鮮あるいは台湾、中国での理数科教科書の編纂にあたっておこなわれていたが、それらを再編しながら日本国内での理数科教科書の編纂に部分的にいかしていたこと。 5 理数科における総合あるいは統合化は、橋田邦彦文相(東京帝国大学・電気生理学者)の「自然合一」等の思想に沿いながらも、具体的には、塩野直道(東京帝国大学物理教室卒・教科書監修官)によるところがおおきかったこと。
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