1. 研究課題のまとめ これまでの研究をもとに、研究課題のまとめの作業を行った。主な内容は、「(1)鑑賞教育の現状と問題点の所在」「(2)学習指導要領における鑑賞教育の考え方と方法」「(3)戦後における鑑賞教育論の諸相」「(4)鑑賞教育の見直しと今後の可能性」「(5)鑑賞教育の実践化のための考え方と方法」である。 (1)では、学校現場における鑑賞指導の実態を先行研究及びアンケート等によって調査し、鑑賞教育を進めるうえで改善すべき課題を明らかにした。(2)では、学校現場での図画工作・美術の授業の展開に重要な影響を与えてきた学習指導要領を取り上げ、各期の鑑賞教育の考え方と方法を調査分析し、戦後の図画工作・美術教育における鑑賞教育の制度的背景を探った。また、その作業を通じて、鑑賞教育の今後の課題を整理した。 (3)では、戦後の美術教育研究者らの代表的な鑑賞教育論を検討し、学習指導要領の鑑賞教育観との相互関連や時代的な特質を明らかにした。以上の検討をふまえて、(4)では、図画工作・美術科における鑑賞教育を改善、充実するための課題と方策について整理した。 (5)では、実際の授業実践に伴うさまざまな現実的条件を考慮したうえでの、鑑賞指導の実践にかかわる基本的な考え方と方法を検討した。 2. 今後に残された課題 本年度は、当初小・中学校の授業担当者に授業実践を依頼し、鑑賞教育の授業モデルの検証を行う予定であったが、十分な結果を得るまでに至らなかった。授業実践を通しての検証は、今後さらに継続して行うこととした。なお、小・中学校の授業担当者の共通理解を深めるねらいから、鑑賞教育における題材化のプロセス及び方法に関する考察を「鑑賞教育における『題材化』の試み」 (『美術教育ぐんま塾 年報98』平成11年3月末発行予定)にまとめた。
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