研究概要 |
今年度の研究実績は次の通りである。 (1)「数学的コミュニケーション能力の育成(VI)ー第6年次報告ー」,日本数学教育学会第79回群馬大会発表 (2)「数学的な関連を生かした授業への試み(II)」,日本数学教育学会第79回群馬大会発表 (3)「数学的コミュニケーション能力の育成(IV)ー算数科授業での発話におけるコンテクストの設定ー」日本数学教育学会誌,第79巻,第10号,pp.2-10 (4)“Establishing a context to explain a mathematical solution",日本数学教育学会第30回数学教育論文発表会論文集,pp.733-734 「授業における相互作用の実証的検討ー数学的コミュニケーションの分析を通してー」日本数学教育学会第30回数学教育論文発表会「テーマ別研究部会」発表集録,pp.73-80 上記の論文のうち,(1)と(3)は,数学的コミュニケーション能力の育成をめざして,昨年度に引き続き,「考えの伝達や討議などの交流ができる」ということの検討を行ったものである。埼玉大学教育学部附属小学校での算数科の授業をもとに,そこにおけるコンテクストの様相を探ったものである。そのことは,コンテクスト設定の能力がリテラシィを考えるにあたって重要な部分となるであろうという問題意識によるものである。(4)は,このことを,子供たちの算数ノートでの記述の中に探ろうとしたものである。また、(2)は,埼玉大学教育学部付属中学校での数学科の授業をもとに,「学習シール」の記述の分析することを通して,生徒自身の自ら関連づけていこうとする態度の形成を,「公共化されたコンテクストのもとで,自らのコンテクストを生み出し,他者の(他の)コンテクストと関連づけ,自らの新しいコンテクストをつくっていく,あるいは,公共化された新しいコンテクストをつくっていく」という視点から捉えていったものである。(5)は,授業の場におけるコミュニケーションを3つの類型に区分し,どのように相互に作用し合っているかを明らかにしたものである。実際にどのようなコミュニケーションが存在するかを類型化しておくことにより,リテラシィとしてコミュニケーション能力を培うときに作り出そうとするコミュニケーションを検討する視点を与えると考えたのである。
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