平成8年度から平成10年度における研究成果の概要は、次の通りである。 第1に、リテラシイとしてのコミュニケーションが学校教育の中でどのように位置づくかという点について明らかにした。特に算数・数学科においては、基礎・基本を構成する資質や能力として捉えること、また、そのために、数学的なコミュニケーション能力としてカリキュラム上に適切に位置づけることが大切であることを明らかにした。 第2に、数学的なコミュニケーション能力を構成するものとして、「考えの伝達や討議などの交流ができる」ということについて、授業での子供たちの様子を分析し、話し合いやかくことの技能を明らかにした。特に、そこでは、子供たちの発話における文脈(コンテクスト)設定の特徴を明らかにし、それをコミュニケーション能力における重要な要素として捉えた。 第3に、数学的なコミュニケーション能力を発揮して、コミュニケーションをどのような方向へと向かわせるかについて考察した。そこでは、多様な理解の文脈の生成と関連づけが重要であると考えた。いいかえれば、理解の広がりと豊かさを生み出すことである。 第4に、数学的なコミュニケーションがなされるための学級という、コミュニケーション空間について考察した。そこでは、他者との関係性と学級のもつ規範性に着目し、それらの形成のための協同的な学習活動や教師の役割の重要性について論じた。 以上を、小学校・中学校の両方の可能な範囲でデータを収集しながら、一貫した研究としてまとめた。
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