本研究の目的は、中等教育段階における遺伝の問題解決能力と認知的発達段階との関連を明らかにし、問題解決能力の向上に寄与しうる学習指導法を考案することである。 平成8年度は、次の2点について調査研究を行った。一つは、認知的発達が一般的な遺伝の問題解決のための必要十分条件かどうかを明らかにすることであった。もう一つは、日常的な文脈における遺伝の問題と生物学的な文脈における遺伝の問題というように、文脈によって問題を変えた場合に、問題解決の成否がどう異なるか、認知的発達はどう影響するかを明らかにすることであった。 上記の目的を達成するために、まず、調査問題を作成した。生徒の認知的発達段階を特定するための調査問題、生物学的な文脈における遺伝問題、そして日常的な文脈における遺伝問題を作成した。認知的発達段階については、いくつかの文献を検討した結果、Roadrangkaらによって開発されたGALT(Group Assessment of Logical Thinkig)を参照して作成した。遺伝問題は、StewartやKinnearらの先行研究に基づいて作成した。 上記の調査問題を中学生に実施した。その結果、次のような傾向が明らかになった。中学校の遺伝領域で扱われるような遺伝問題の解決には、必ずしも、形式的論理的な操作能力を必要としない。生物学的な文脈における遺伝問題に正しく応えることができた生徒でも日常的な文脈の問題になると誤って答えてしまう。詳しくはこれからの分析をまたねばならないが、来年度は、今回の調査をさらに発展させ、問題解決能力向上のための学習指導法について考えていく。
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