研究概要 |
本研究は,平仮名学習の初期段階において書字の学習に困難を示す児童が,適切な書字を獲得できるようになるための条件とその過程を明らかにする研究の一環として行われているものである。本研究では,特に,書字結果に与える筆圧の影響に注目している。平成8年度は,筆圧のコントロールメカニズムとそれに関連した教育的な問題について文献的な検討を行った。また,筆記用具の持ち方が筆圧に与える影響を詳細に検討するための基礎資料の収集,分析を行った。具体的には,小学1年生の児童を対象として,平仮名,数字,未知の図形等を鉛筆でかく課題を与え,課題遂行中の筆圧を測定するとともに,筆記用具を手にしてから書き始めるまで,及び課題遂行中の手指の動きをVTRに記録したものの分析を行った。その結果,与えられる課題によって筆圧が異なること,筆圧は運筆様式と関連があり,指先,手首,肘,肩という,運筆に関わる運動の様子を合わせて検討していくことの必要性が示唆された。また,言語教示が与えられた場合,どの程度筆圧の調製が可能であるかについても分析を行ったが,この点については,さらに教示方法を改善するための検討が必要である。また,幼児期後期にある子どもを対象にして,学校での一斉指導がなされていない状況での資料の収集の必要性が生じ,現在その準備にとりかかっている。次年度からは,平成8年度の成果を基礎資料として,書字学習が困難な児童について,その状態を詳細に把握する作業を行い,合わせて実際の指導を継続的に行うことにより,書字の改善を導くための指導方法を検討していく予定である。
|