本研究は、児童・生徒が積極的な福祉観・高齢者観を深めることのできる問題解決型学習を核にした家庭科の学習プログラムと教材を開発することを目的とした。 3年間の研究の第1年次は、家庭科における福祉教育と授業分析に関する文献研究を行った。また、高校の教師と共同研究の体勢をつくり、高齢者学習のプログラムを立案した。第2年次は、前年度の計画に基づき授業を実施、授業記録や諸調査を行った。3年次は、3地域の授業研究を合同で検討した。以上の研究から、次の成果を得ることができた。 1. 高齢者に関する学習において育成する能力について、福祉教育と家庭科教育の目標論から検討し、生活に主体的に関わる力、他者とともに生きる力、ノーマライゼーションの理念の理解等に焦点化した。 2. 家庭科における問題解決学習として、地域や生徒の生活環境から課題を見いだし、フィールド学習や模擬体験的学習活動を取り入れながら行うことにより、生きる力を育成することを明らかにした。 3. 家庭科における高齢者・福祉学習は、住生活領域や家庭生活領域、それらを融合した題材、及び総合的学習として必要な内容であり、また有効な題材であることが明らかになった。 4. 上越・福井・富山の各地域において、高校の家庭科教員と共同研究を組織した結果、生徒の実態をふまえながら学習活動を多様にすることができ、また、授業を分析的に研究することができた。 今後はさらに小・中学校段階のプログラム開発と授業研究をすることにより、家庭科における一貫した福祉教育を研究することが課題である。
|