地球環境の悪化が指摘されて久しいが、その研究は方法論的にも多様化し、混沌としているのが現実である。これを反映して教育の場における環境教育の体系化や具体的方法論などはいまだに確立されていない。 他国を主な発生源とする大気汚染のような汎地球的現象は、その保全のための手だて一つをとっても一国の国家観に立脚した干渉や技術指導などでは不可能に近いというのが実状である。このためには新しい世界観と価値観に立った地球環境の保全のための理念と技術指導が不可欠であるが、難しい問題である。それ故に長期的展望に立った学校教育における環境教育の位置づけや役割が存在するものと考えている。 本報は初年度分の報告であるが、環境教育を教科教育の観点に立って位置づけ、(1)新しい世界観・価値観を導入した環境教育とこれを踏まえた社会科教育、(2)経験則に培われた「生活の知恵」を教材とし、自然地理学的観点にその基礎をおいて環境教育について一応の成果(日本地理学会に論文提出中)を得ることができた。ここで提起する環境教育とは人類が生きてゆくための「東洋思想的心の支え」を構築する基本的価値観に根ざすものであり、それ故にライフワークとしての根幹をなす思想でなくてはならない。人類が生きる上で必要不可欠なこれらの思想の育成については学校教育の果たす役割が極めて大きい。学校教育の場での長期的展望に立った教育実践を支えるためには明確な倫理観・価値観に培われた環境教育の体系化と方法論の確立が不可欠である。また、地理的分野における自然環境に適応した人類の生産活動や都市空間に係わる現象について環境教育の観点からは教科書に多用されている教材の見直しをせざるを得ないことが明らかとなり、初年度の成果中に組み入れた。
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