社会科における環境学習には、(1)自然に順応・適応した日常生活を通じて学んできた経験則としての「生活の知恵」を多用した教材や、(2)その自然環境がもつ限界許容量的観点からの研究が不可欠であり、一層多用しなければならないので、以下の2点にたって本年度の研究を行った。 1 社会科成立後、約50年の歳月を経たが、その成立過程を踏まえると果たして社会科は真の教科として成立しているのであろうか。そこで、いわゆる社会科3分野を統合・融合させた試案を考えた。社会科を真の教科とするためには、(1)教材論的観点からも、(2)学校知と日常知とを融合させた教材論的観点からも「生活の知恵」を教材とすることが好ましいので、これらの観点から研究を行い、すでに、その一部を論文として発表(地理学評論、71-2)した。 2 日本山地の自然環境は、ガラス細工を積み重ねたような脆い地形・地質からなりたっており、屋久島もその例外ではない。このような条件下にありながら、過酷な開発をされないままに、今日までその自然環境の大半が保存されてきた。この屋久島の優れた自然景観が世界遺産に登録されたことを契機に、観光客の殺到で、その自然環境に急速な変化が認められるようになったので、(1)自然景観の維持と生物の自然生態系の維持のための具体的手だてについて、(2)その自然環境がもつ観光客の受け入れ限界容量と観光客のマナーなど、とるべき具体策について調査・検討した。
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