研究概要 |
低学年児童では,状況判断能力に係わる多点注視選択反応能力が未発達で,攻防相乱型ゲームを行う上でのレディネスの充分でないことが前年度の結果において認められた。したがって,本年度は小学3年生から6年生の8学級(男女児童298名)を対象に,ラインポートボール(コートの一部に地理的攻防分離型の要素を残すと共に攻撃側の数的優位を保障するように構造化した過渡的攻防相乱型ゲーム)とバスケット(攻防相乱型ゲーム)の授業を各学年のそれぞれ1学級に実施した。その際,単元開始,中間,終了時の計3回,ゲームをVTRに収録し,各プレーヤーのボール保持時間,インターセプト数,ボール軌跡,攻撃完了率(シュート数/ボール獲得数×100),ゴールマンの動き,等の観点,ならびに指導者の主観的評価によって状況判断能力を把握した。あわせて,単元経過に伴うゲーム様相の発展,また,毎授業時間後に実施した「よい授業への到達度調査」の各項目に対する反応と自由記述の内容,ならびに学習ノートのグループの作戦の広がりや深まりからゲーム状況把握力や状況判断能力の質的高まりを評価した。 これら学習成果のゲーム様式による相違や学年差を検討した結果,3・4年生では,ラインポートボールではかなり正確に状況判断を出来るようになるが,バスケットボールでは困難であることが認められた。さらに,いずれの学年においても,技能下位者や女子児童にとっては、ラインポートボールの方が状況を判断しやすいことが認められた。 また,多点を注視し素早く選択反応する能力は,成熟の要因のみでは発達しないように推察され,ボールゲーム学習等を通して育成する必要のあることが示唆された。 以上のことから,ゲーム状況の予測の過程の能力を伸張させるのは小学校中学年以降が適切であると考えられ,中学年では「過渡的攻防相乱ゲーム」が,高学年ではゲーム人数を減少させた「攻防相乱型ゲーム」が教材としてふさわしいと考えられた。
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