研究概要 |
「学校嫌い」を理由に年間で30日以上欠席した不登校児の数は、小・中学生で平成七年度に81,562人と過去最高を記録した(文部省の学校基本調査)。島根県の教育関係者間でも、「もはや“不登校"や“いじめ"は他人事ではない」が一致した見解である。にもかかわらず、「不登校児に対する音楽療法の用意がある」との話を持ち出すと急に寡黙になる。(不登校児は)「他のクラスにはいるようだが自分のクラスにはいない」「昨年まではいたが今は気がつかない」「校長が口を出すと圧力と勘違いされる」等々の反応か、或いは無反応。多くの教師がこのような対応をせざるを得ない背景の中に“音楽療法家"に“資格"がないこともあると考えられる。一方では、資格のある精神科医や臨床心理士のアドヴァイスがかえってわが子の状態を悪くしたとの訴えも耳にする。いずれにしても、教育界の主役は“子どもたち"である。“いじめ"を苦にした不登校や自殺が表面化した時、いつでも耳にする「知らなかった」「二度とこのような悲しいことが起こらぬよう」の言葉を我々教育者は繰り返してはならない。平成8年9月に訪れた某青少年相談室で交わした子どもたちとの約束「また明日来て一緒にお昼ごはんを食べようね!」も「筋を通してもらわないと困る」の理由から出入りしにくくなった。本研究は、不登校児に対して体感音響装置を用いた音楽療法の効果を期待して始められた。精神科医によるこの種の研究成果も発表されている。しかし、資格のない音楽療法家が、クライエントに出会うことは難しい。悩める子どもたちより、何かを気にする大人たちの壁が厚いというのが現段階での率直な印象である。
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