本研究で私は、21世紀の教科指導のあり方を展望しつつ、新しい社会科学習論を提案してきた。それは、「教えるシステム」から「ともに学ぶシステム」への転換の提案であり、子どもを学習の主人公とする社会科の提案である。 「子どもとともにつくる社会科学習」の基本は(1)子どもの問いから出発した「学習における個別化と共同化」と、(2)専門家や当事者から学ぶことを基調とした「調べる学習」である。そのときの教師の役割は(1)子どもに学習の自立のきっかけを与える(探究学習の主体にする)(2)教師は謎解き探偵団の団長になる(3)共同の学びを組織するの3点に集約される。学習の自立は、問いを持たせる事実との出会いが重要である(教材の選択の問題)。次には探検活動・探偵活動の組織化である。戦死者のお墓調べのような具体的な課題を持った調べる学習である。学習の共同化は、対話を通した集団的な学び(交流=コミュニケーション)である。そのときの対話とは、相互の情報交換というものではなく、ダイアローグつまり相互否定による両者の成長である。学習の社会化は、人との出会いを通した学びである。子どもに伝えるべき何かを持った人との出会いを通して得たものを、クラスの仲間に伝える中で子どもたちの目は社会に開かれていく。 再度まとめると、「子どもとつくる社会科学習」における教師の役割とは(1)情報の源泉に子どもたちを誘うこと(2)子どもたちが専門家や当事者から学んでいるとき、教師もまた子どもと同じように学ぶこと、その上で、(3)自由な表現と意見交流のできる場をつくることである。大月書店刊「【教え】から【学び】への授業づくり4 社会科」(97.1)にまとめた理論と実践に沿って、全国各地の研究会・学習会で新しい社会科の学び=「子どもとともにつくる社会科学習」を伝えている。
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