幼児は、日常生活の遊びの場面において、他者と一緒に遊びのできごとをつくりあげている。遊びのできごとは、参加者の役割分担、ものや場の見たて、使う道具の製作と使用などを伴いながら、会話を中心とする相互行為を通して実現されている。 平成9年度は、幼児の遊びの展開過程において、会話におけるできごとの展開と、遊びで使う道具の製作と使用とが、相互にどのように関係して遊びを実現させていくのかを調査研究した。 本年度は、上越教育大学学校教育学部附属幼稚園を研究協力機関とし、平成9年6月より平成10年1月まで週1回の参与観察を行った。調査では、造形的活動を伴う幼児の遊びのできごとを観察単位とし、ビデオカメラを用いた周辺的・参与的な観察をおこなった。調査記録の分析は、会話、相互行為、造形行為の3項目について、意味単位により記述して相互行為分析をおこなった。 本年度調査及び分析により以下の結果を得た。(1)遊びのできごと(物語)空間は、自他が遊びの実現に向けて行う相互行為により状況的で相互的に構築される。(2)遊びのできごとにおいて作られ使用される絵や道具は、そのできごとの視覚的共同性と参加形式をつくる。(3)遊びの道具は遊びのできごとをつくる会話ややり取りの相互行為文脈の中で作られ、使用されることにより意味を発揮する。(4)遊びの中でつくられる道具は、遊びにおいて使用されることにより、他者の発話と参加をつくりだし、できごとを展開させる役割をはたす。
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