本研究は、幼児の日常生活における遊びにおいて、会話におけるできごとの展開と、その遊びで使う絵や道具を作ること、またそれを使用して遊ぶこととが、相互にどのように関係して遊びのできごと(物語)を実現させていくのかを調査研究した。 調査は、幼稚園における造形的活動をともなう遊びのできごとを観察単位とし、ビデオカメラを用いた周辺的・参与的な観察を週1回、のべ12カ月にわたり行った。調査記録の分析は、以下の(a)から(e)の視点で意味単位により抽出した遊びの事例に関して、その相互的・協働的構築過程の相互行為分析を会話、相互行為、造形行為の3項目より行った。(a)会話における遊びのできごとの展開過程。(b)遊びの道具の製作過程。(c)遊びの〈場〉の構築過程。(d)製作した遊びの道具や場の使用と遊びの変容過程。(e)遊びを構成するメンバー相互の参加行為とできごと内での対他的関係の再編成。 本研究により以下の結果を得た。(1)遊びのできごとは、自他が遊びの実現に向けて行う会話の過程、遊びの道具や場の相互的製作過程、作ったもので一緒に遊ぶ実践的展開過程のそれぞれが、状況的で相互的に構築されることにより実現される。(2)遊びの場と道具の製作及びそれらの使用による遊びの実戦的展開過程は、日常生活場面での対他的関係や対物的関係をできごと内において再編成する。(3)遊びのできごとにおいて作られ使用される絵や道具は、自他間におけるできごとの視覚的共同性、説明可能性、参加形式をつくる。(4)遊びの道具や場は、会話ややり取りの相互行為文脈の中で作られ、対他的に使用されることにより意味を視覚的・機能的に実現する。(5)遊びの中でつくられる道具は、遊びにおいて使用されることにより他者の発話と参加を作り、できごとを新たに展開させ構築する役割を果たす。
|