研究概要 |
助川(1996)は韓国人日本語学習者の日本語アクセント習得を研究するための基礎資料として韓国高校日本語教科書10種類の語彙の全てをモ-ラ数,アクセント型,特殊拍の配置をパラメータとしてパソコン上でデータベース化したものである.データベース化によって韓国高校教科書の語彙に音声教育上,重大な問題点のあるところが示唆された.それは,長音と撥音の連続する超重音節を含む語彙がほとんどの教科書に採用されていないことである. 前川(近刊)は以下の2点の知見を得た.(1)韓国人による日本語長母音の知覚を合成音声を用いて実験音声学的に検討した.その結果,韓国語の出見方言によってはピッチの形状が長母音の知覚に著しい影響を及ぼすことが分かった.(2)日本語と韓国語の閉音節の構造を持続時間の観点から比較した.その結果,韓国語の閉音節においては音節の核を成す母音に短縮が生じているのに対し,対応する日本語の音節では短縮が生じないことが分かった.知覚実験により,この短縮の効果を検討した結果,母音の持続時間には両言語ともに心理学的実在性を示唆する結果が得られた.
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