1.研究成果 本研究では、日本語が第二言語(外国語)として習得される過程と第一言語(母語)として習得される過程を比較し、第二言語と第一言語の習得のメカニズムの違いを解明することを目的とした。研究は、日本語を第二言語として学ぶ成人(以下、日本語学習者)及び日本人の子供と大人から言語発達の資料(物語文)を収集して分析することにより進めた。収集したデータは、データベース化し、将来の研究にも耐えうるよう整備した。 被験者の概要は、日本人の子供3歳から11歳まで各10名、成人40名、及び、日本語学習者(英語を母語とする者)初級、準中級、中級、上級、超上級まで各10名である。 この2年間では、第一言語と第二言語の発達過程の中で、特に物語の全体構造・局所構造、物語の言語化(Filtering)、文の統語構造等を重点的に分析した。この結果、物語の全体構造・局所構造においては、物語構成要素の数の変化に両者間で差異が見られた。また、物語の言語化(Filtering)、文の統語構造に関しては、両者の間で使用する言語形式に差異が見られた。特に、日本語学習者の場合には、使用する言語形式の選択に母語の影響があることが明らかになった。さらに、第二言語の習得過程で見られる言語転移、過剰般化、化石化等は発達の様々な段階で起こることが明らかになった。 2.研究成果の発達 研究によって得られた知見の一部は、96年10月に行われた第二言語習得研究学会(Second Language Research Forum'96;於アメリカ合衆国アリゾナ州、アリゾナ大学)で発表し、最新の情報や意見、コメント等を得て研究にフィードバックした。
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