本研究では、外国人日本語学習者(NNS)の日本語の視点・ヴォイスの習得過程について調査、検討を行った。視点、ヴォイス(直接受身、間接受身、受益文)、複文等の習得状況を絵を用いて測る「文生成テスト」を実施し、(1)JFL(Japanese as a Foreign Language)の環境のNNSの6レベル別分析(cross-sectional study)及び(2)JSL(Japanese as a Second Langage)のNNSの追跡調査(1回目のテスト得点によって分けた3グループの1年後のfollow-up Study)を行った。 (1)(2)を調査カテゴリ別に分析した結果、複文、受益文はJFL、JSL両環境に於て習得状況はよいが、視点、間接受身はJSLに於ても習得の進みにくいことが明らかになった。受益文については英語話者の場合、能動文と同じ視点をとる「てくれる」の生成が「てもらう」に先行すること、間接受身については、その習得過程に直接受身の現れることが分かった。 さらにデータを増やし、JFLとJSLの英語話者、JSLの中国語、韓国語、インドネシア・マレー語話者等のデータにimplicational scalingを用いてヴォイスの生成順序を検討したところ、環境、母語の如何に関わらず、[受益文>直接受身>間接受身]という順序がimlicational hierarchyを成していることか分かった。 最後に、自然なヴォイスの生成との比較という点から、英語、韓国語、中国語話者各30名のOral Proficiency Interview に現れたヴォイスの生成を調べた結果、[可能>受益文>直接受身>間接受身]のimplicational relationが認められた。したがって、筆記テストによるデータと自然な口頭データから同じ生成順序が認められ、日本語ヴォイスの習得順序をある程度検証できたと言える。
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