本年度の研究成果としては、研究代表者の竹村と統計数理研究所の栗木による尤度比検定の漸近理論に関する論文が2件発表された。これらは、尤度比検定統計量の帰無仮説のもとでの分布の漸近展開の性質を調べたもので、バ-トレット補正可能性に関する通常の結果を包含関係にある仮説の場合や高次の展開の場合に拡張したものである。その他竹村と本田による分散不均一性のもとでのチャウ検定のサイズに関する論文も発表された。ここでは回帰分析の構造変化の検定問題において分散不均一性がどのような影響を及ぼすかが議論されている。また分担者の久保川とM.S.Srivastavaによる分散比の推定量の改善問題に関する論文も発表された。これは比の分母分子にそれぞれ縮小推定を用いることによって分散比の推定を改善するものである。 その他現在進行中の研究としては以下のようなものであり、かなりの成果が生まれている。まず竹村・栗木・紙屋英彦によるcross-sectionally contoured distributionに関する研究がある。これは多変量解析における楕円型分布族を一般化して、群作用におけるクロスセクション上で密度が一定となるような分布族の性質を調べるものである。これに関しては、現在2本のディスカッションペ-パを作成しており、成果を投稿中である。また星野伸明・竹村によってモンテカルロ法における直交表の利用に関する研究が進行中であり、これもディスカッションペ-パの形にまとめられた。
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