ガウス定常過程で記述されるフィードバックシステムにて、開ループ伝達関数の同定問題を解くことは等価イノベーションモデルに付随するRiccati方程式の安定特解を持つための条件を求めることであった。ところで、OECD-NEAの炉雑音国際会議にてフィードバックシステムの開ループ伝達関数を推定するベンチマークテストにてARモデルを用いた研究結果が数多く報告されたが、満足のいく一致が同定結果にみられず、この不一致の原因を調べることが大切となっている。そこで、統計的逆問題の観点から本研究では、最小位相性を持つフィードバックシステムにおけるARモデル同定に際して、開ループ伝達関数が本来同定されるべき十分条件下にあってもフィードバックモデルと同定ARモデルとのモデル構造の違いから、同定された開ループ伝達関数にはモデル次数依存した偏差が残っていることを明らかにした[第11回システム同定に関する国際自動制御連盟学術会議(SYSID'97)にて採択済]。次に、理論上同定可能となる最小位相性なるフィードバックシステムにおいてイノベーションモデルを用いた時系列データ解析における解析的考察を行ってみると、フィードバックループの結合構造に起因して、同定開ループ伝達関数には極と零点の打ち消しが発生していた。そこで、モデルの低次元化のための数理の解明とそのための手法の確立が必要となり、イノベーションモデルに基づいた理論的手法の統計的妥当性を確認するためにシミュレーションを行い、統計上の問題点を解明した。
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