OECD-NEAの炉雑音国際会議にてフィードバックシステムの開ループ伝達関数を推定するベンチマークテストにて満足のいく同定結果にみられず、この不一致の原因を調べることが大切となっている。そこで、統計的逆問題の観点から本研究では、本来同定されるべき十分条件である最小位相性を持つフィードバックシステムにあってもフィードバック構造から、同定された伝達関数は高次の次数で、同定開ループ伝達関数には極と零点の打ち消しが発生していた。そこで、同定された伝達関数は制御で開発されたものと類似の手法を用いて低次元化を実行した。これによって入出力数が等しい正方のフィードバックシステムにおける開ループ伝達関数同定の決定版が完成し、それを原子力学会欧文誌に発表した。開ループ伝達関数の同定問題を解くことは等価イノベーションモデルに付随するRiccati方程式のある種の安定特解を持つための条件を求めることであるので、ガウス定常過程で記述されるフィードバックシステムにて、そのイノベーションモデルに基づいた本手法の統計的妥当性を確認するためにシミュレーションを行い、その統計上の問題点も調べた。 実際の問題への適用を考えると、実機プランの多様性から入出力が異なる非正方フィードバックシステムにおける伝達関数同定を考える必要がある。そこで、等価イノベーションモデルに付随したRiccati方程式の一般逆行列を用いた拡張を試み、シュミレーションにて開ループ伝達関数の同定可能性を数値的に検討した。その結果、解析的考察から正方モデルでは最小位相性がそのための十分条件であったので、非正方モデルにも適用できる「一般化最小位相性」に相当する条件を見いだすことが今後の1つの研究課題であると分かった。
|