初年度の研究にて時系列モデルの低次元化手法を、次年度では特に入出力数が異なる非正方のフィードバックシステムを考察した。ところが、入出力数が等しい正方フィードバックシステムの同定問題ではシステムと時系列データから構築されたイノベーションモデルは互いに正方モデルであるためその対応付け容易であったが、入出力数が異なる非正方フィードバックシステムにおける同定問題は容易でない。そこで、最終年度では考察の対象を3重のフィードバック構造を持つシステムに絞って議論を深め、非正方フィードバックシステムにおける伝達関数同定にて不一致を発生させる擬正方イノベーションモデルの数理を考察した。3重フィードバック構造を持つシステムの同定においては3出力変数の組み合わせからスカラ、ベクトル版モデルとして同定する場合と、出力の一部が観測されない縮約版モデルとして同定する場合の3種類の擬正方イノベーションモデルを考察した。さらに、正方システムの同定では最小位相性が同定可能のための十分条件の1つであったが、それを非正方システムに発展させた時には「一般化最小位相性」なる条件が必要となることを一般逆行列を用いて解析的に示し、それをスカラ、ベクトル版における同定問題として確率システムシンポジウムに発表した。縮約モデル版における同定問題として非正方システムを同定した時に得られる擬正方イノベーションモデルの数理を考察し、それを情報理論とその応用学会にて報告した。
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